令和7年度教育行政執行方針
※影山吉則教育長の「吉」の字は土の下に口です
はじめに
我が国は、予測を超えて進む少子高齢化による人口減少や地域社会の縮小、パンデミック、相次ぐ自然災害、更には、生成AIの登場による急速なデジタル技術の進展等、大きな時代の変化に直面しております。このような大変革期の中、我々を取り巻く社会環境の複雑性が増し、次々と想定外の出来事が起こるなど、将来予測が困難な状況となっております。この状況に立ち向かうには、これまでの価値観や知識だけでは対応できないことを前提に未来を創造できる人材の育成が求められております。そのために、サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を融合させたシステムによって経済発展と社会的課題の解決を両立する「Society5.0(超スマート社会)」が、目指すべき社会の姿とされているところです。
そこで、本市におきましては、Society5.0を生き抜くために必要な人材の育成が急務であるとし、そのための学びの実現を重視して参ります。しかし、超スマート社会となっても、リアルな人間の営みによって、社会や学校が形作られていくことを忘れてはなりません。「人間は互いに関係しあって生きている」という心理学の考え方があるように、今、「デジタル」を道具として使いこなしながら他者と協力して社会を生き抜く人材の育成が求められているところです。
このことから、学校教育におきましては、「教育DX(デジタル・トランスフォーメーション)」の推進と並行して、「デジタルの力でリアルな学びを支える」という視座を持ち、「個別最適な学び」と「協働的な学び」を一体的に発展させ、「主体的・対話的で深い学び」の充実・改善に向け、一層の授業改革を進めて参ります。
併せて、本市の学校教育の更なる進展のために、児童生徒と教職員の双方にとって、より良い教育環境や特色ある教育活動も重要であることから、学校と教育委員会が関係機関、団体等との連携はもとより、大学等の高等教育機関との連携も強化して参ります。
また、市内の市立及び道立学校が「「ふるさと創生教育『だて学』」コンセプト・フロー」に基づき、発達段階に応じた学校種ごとの目標達成を目指し、地域や関係機関、団体等と組織的・計画的に緊密な連携を図る必要があります。このような取組は、世界文化遺産「北黄金貝塚」やアイヌ文化、亘理伊達家移住による武家文化が連なり融合したという本市の稀有な歴史文化の基盤を活かした、先人の叡智から学ぶ教育環境の構築につながります。更に、地元愛に根差した地域創生の原動力となる「伊達プライド」を持った「伊達人(だてびと)」の育成、つまり、地域の未来を担う人材の育成にもつながると考えております。
社会教育におきましては、「人生100年時代」に対応するための「社会人基礎力」が求められており、この基礎力を伸ばすために、リカレント教育やリスキリングの重要性が増しております。各種講座や事業を通じて、急速な経済・社会環境の変化に対応するためのスキルアップやキャリア形成だけでなく、人生を豊かにするために生涯にわたり学び続けようという機運が醸成されるよう努めて参ります。
また、北海道伊達開来高等学校の特色化・魅力化への支援、北海道伊達高等養護学校の本市と連携した教育活動への支援、そして、これら道立学校と市立学校との系統性を持った教育の実施により、本市教育の一層の充実・改善を図って参ります。「だて学」をはじめ、教科指導や様々な教育活動等を通して、市内のすべての学校が「Team All DATE Schools」をスローガンに、一体的に教育活動を展開することは極めて重要です。これにより、本市教育の質の向上が図られるだけでなく、子どもたちが将来、本市教育を「だての学び」として心に留め、その成果を体現し、次世代に継承・発展させることができるようになると考えております。
伊達市教育委員会といたしましては、「第2次伊達市教育振興基本計画」に基づき、各種教育施策の取組を進めるとともに、学校教育と社会教育の連携を図り、本市教育の基本理念に掲げる人材育成と社会の実現を目指して参ります。
教育行政に臨む基本姿勢
教育を取り巻く現状と課題を踏まえ、本市の教育理念「自立・協働・創造」の目指すべき方向性について、「自立」は「夢を志に高め、たくましくしなやかに、生涯を通じて挑戦し続ける人の育成」、「協働」は「共に学び育ちあう絆を強くし、地域が人を育み、人が地域を創る社会の実現」、「創造」は「郷土の歴史と文化を継承・発展させ、新しい価値観を創出する人の育成」とした意義を再確認し、教育活動の更なる充実・発展を図らなければならないと考えております。以上のことを基本姿勢として、自らが伊達市の将来を創り出していくという主体性を持った人づくり、郷土の歴史や文化を誇りに思い、生涯にわたり生きがいを持って活躍できる学びづくりのため、次に挙げた推進項目と主要な施策を中心としながら、教育行政を執行してまいります。
主な推進項目
令和7年度の重点施策を学校教育、社会教育、歴史・文化芸術、スポーツの4分野に分け、それぞれに推進項目を定め事業を推進していきます。主な推進項目は次のとおりです。学校教育
- 社会を生き抜く力を育む教育の推進
- 豊かな心を育む教育の推進
- 健やかな体を育む教育の推進
- 地域とともにある学校づくりの推進
- 信頼される教育環境の整備
社会教育
- ふるさと意識を育て地域づくりに参画する青少年教育の推進
- 共に支えあう地域づくりを目指す社会教育の推進
歴史・文化芸術
- 特色ある地域文化の推進
- 歴史文化を活かしたまちづくりの推進
スポーツ
- 豊かな心身を育むスポーツの振興
主要な施策
第1 学校教育
- 地域の将来を担う人材の育成にもつながる「だて学」の充実
- 学力テストの結果をもとにした改善プランの策定、英語検定や漢字検定など資格取得の支援促進
- 教育委員会で作成した教育活動等におけるガイドラインや暑さ指数に応じた夏季期間中の教育活動の徹底
- 「GIGAスクール構想」により導入されたICT機器や高速大容量の通信ネットワークを活用した、オンライン学習の推進
- 児童生徒の心や体調の変化を把握し、いじめや不登校といった児童生徒が発するSOSの早期発見・早期支援につなげるため、1人1台端末を活用した「児童生徒の心身健康チェックシート『KOKOKARA』」を活用
- 特別支援教育について、児童生徒一人ひとりの教育的ニーズに応じた教育の場の提供
- ネットトラブルの未然防止に向けた指導の継続と相談体制の充実
- 子どもたちが主体的に外国の文化や言語に触れられる機会として、「だてっ子イングリッシュ・アドベンチャー」を実施
- 様々な自然災害に備えた実践的な避難訓練等の実施による、児童生徒の防災意識の向上
- 互いの違いや良さ、ジェンダー等、多様性を学び、認め、理解し合うことで、自分と同じように他者も尊重できる態度を養う教育活動の推進
- 他者との関わり方を学ぶとともに、協働作業による達成感を味わうためのワークショップの実施
- 不登校対策として、「こどもの国フェニックス」を活用した社会的自立や学校復帰に向けた取組の充実
- 体力テストの結果を踏まえた体力向上プランの作成と学校全体での継続性のある取組による子どもたちの健全な心身の育成強化
- 栄養教諭の派遣事業の継続と食育センターの活用による食育の取組の充実
- 子育て世帯の負担軽減を図るため、学校給食費保護者負担支援事業の継続実施
- 体育科、保健体育科の授業や外部講師による「出前授業」を活用した、がん教育の充実
- 学校と地域が一体となって子どもたちを育み、地域総がかりの教育と学校を拠点とした地域づくりの推進
- 大滝徳舜瞥学校に配置する「地域おこし協力隊」による学校教育への支援、地域と学校との連携の充実
- 関係団体や学校との連携のもと、子どもたちがふるさと伊達市の魅力を体感できる取組の充実
- 指導内容の連続性や系統性を重視した連携の推進、北海道伊達開来高等学校と教科指導を中心とした連携の強化
- 研修会の開催を通じた教職員の指導力の向上と指導体制の充実
- 校務支援システムの活用による学校教育の充実と教職員の働き方改革の推進
- 安全、安心な教育環境の確保のための施設・設備の計画的な改修や維持管理の取組
- スクールガードリーダーや地域住民の見守り活動団体との連携による子どもの安全確保
第2 社会教育
- 多様な体験や幅広い世代との交流を通して、創造性や協調性を養い、夢や目標を持って健やかに成長できる青少年教育事業の充実
- 地域のリーダー育成を目的とした、青少年に対する各種研修や交流事業への参加の促進
- 地元愛に根差した地域創生の原動力となる「伊達プライド」を持った「伊達人(だてびと)」の育成
- 長生大学の学習内容の工夫・改善、学習活動の活性化
- 「だて学」と連携した市民カレッジ、市民講座、長生大学等の講座等の充実
- 児童や保護者にとってより良い放課後等の居場所、学習や交流の場となる「放課後児童クラブ」の充実
- 北海道立図書館等との連携による電子図書等の電子コンテンツの活用の推進、市民サービスの向上
- 「伊達市立図書館運営基本方針」に基づいた居心地の良い魅力ある図書館の実現
- 新図書館への移行に向けた、市民の生涯学習活動、リカレント教育やリスキリングを支援する図書館環境の充実
- ボランティア団体や市立及び道立学校と連携した読書普及活動の推進
第3 歴史・文化芸術
- 関係団体等と連携した質の高い文化芸術の鑑賞機会の提供と、小中義務教育学校の児童生徒の創造性や感性を育むための「学校芸術鑑賞事業」の実施
- 事業の受託者と連携し、市民等を対象とした絵画教室の実施
- 関係団体との連携による、市民の文化芸術振興の持続的発展を目指すための支援
- 「カルチャーセンター長寿命化計画」に基づく、「大ホール舞台調光設備及び大ホール・講堂客席照明改修事業」等の実施
- 関係団体と学校、地域等との連携を強化による、伝統芸能・郷土芸能の持続的な普及と伝承を図る取組の推進
- 世界文化遺産「北海道・北東北の縄文遺跡群」の構成資産である北黄金貝塚の、市民への文化遺産としての価値の周知と、教育資産としての活用
- 「だて歴史文化ミュージアム」と学校、周辺観光施設、指定管理者と連携した「学究の場」「集い学びあえる場」の創出への取組
第4 スポーツ
- 当該及び関連企業等と連携した、「ほくでんスポーツ公園」の継続利用
- 文化部を含めた中学校部活動と伊達スポーツクラブ“藍”による地域展開活動をハイブリッド化させることによる、生徒の活動機会の拡充
PDF令和7年度教育行政執行方針 (423.2KB)
むすび
これからの社会は、生成AIを含むデジタル技術が加速度的かつ飛躍的に進展し、その技術をあらゆる場面で活用しながら個人や社会の活動が行われるようになります。だからこそ、人と人との関わりを大切にし、様々な社会的課題に対し「当事者」としての意識を持って、一人ひとりの多様な幸せ、すなわち「ウェルビーイング(Well-being)」が実現される社会を目指す必要があります。そのためにも、他者と協働しながら新たな価値観を創出して、社会の中で自らを活かすことができ、更には地域の発展に寄与し、持続可能な地域社会の実現に向けて活躍する人材の育成を図らなければなりません。伊達市教育委員会といたしましては、今後も、学校教育と社会教育が連動し、学校、家庭、地域、そして関係機関や団体等との連携を図りながら、本市教育のより一層の充実・発展に向けて、全力で取り組んで参ります。
過去の教育行政執行方針
PDF令和6年度教育行政執行方針 (403.9KB)PDF令和5年度教育行政執行方針 (382.1KB)
PDF令和4年度教育行政執行方針 (376.9KB)
PDF令和3年度教育行政執行方針 (616.4KB)
PDF令和2年度教育行政執行方針 (611.2KB)
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